猫のゆりかご / カート・ヴォネガット・ジュニア

この小説はすごい。
俺は冒頭のこの一文でやられてしまった。

わたしがこれから語ろうとするさまざまな真実の事柄は、みんなまっ赤な嘘である。
ボコノン教徒としてのわたしの警告は、こうだ。
嘘の上にも有益な宗教は築ける。それがわからない人間には、この本はわからない。
わからなければそれでよい。

ボコノン教と言うのは、この作中に出てくる架空の宗教である。
この作品の著者、カート・ヴォネガット・ジュニアはニヒリストで、
この一文はそのありかたを強く象徴している。

また、ボコノン教の聖書ボコノンの書にはこんな一節がある。

第1の書5節
フォーマを生きるよるべとしなさい。それはあなたを、勇敢で、親切で、健康で、幸福な人間にする。

宗教の基本である信心を述べている。
ちなみにフォーマは、非現実(あるいは嘘)のことである。

さらに書の冒頭でこうも述べている。

「馬鹿なことはやめろ!
すぐこの本を閉じるのだ!
<フォーマ>しか書いてないんだぞ!」

また、ボコノン教は、重大な禁忌であり、ボコノン教徒は強く弾圧される。

それは何故なのか。ボコノン教の始祖、ボコノンがこう言ったからだ。

だから俺は言ったのさ
グッドバイ大統領
政府に反逆しなければ
良い宗教は作れない

僕は、ボコノン教徒です。