タイタンの妖女/ カート・ヴォネガット・ジュニア

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫 SF 262)
この作品を読んでみようと思ったのは理由がある。(まぁ、大抵外国の作家を読むときは雑誌やらネットやらで見たのばっかりだけど)
ある文学系雑誌(具体的に言うと新潮社発刊yom yom第一号)でヴォネガットの特集をやっていて、読書家で知られる爆笑問題大田光がそこで書いていた文章にこんな一節があった。

「人間は何よりも戦争を恐れ、二度と戦争を起こさないようにするために、世界中の国々は強力な軍隊を持つことを決意した」。

これはヴォネガット調のジョークを大田が書いたものなんだけれども、何故かそれに心惹かれた。
次の日、書店に赴き、爆笑問題大田も絶賛と書いてある帯がついてあるこの本を買って家に帰った。
なんだかんだでまだ受験前だったので、それから一月近く放置した今日この本を一気に読んだ。

前々からSF作家が世間に送る風刺は並々ならないなと思っていたけど、この作品はある点ではその極致にあるんじゃないかなと思った。
この作品は確かにSFだけど、表現に仕方においてはSFでなくても成立しうる。
例えば、この作品の主人公は一見能動的な部分もあるけど、結局最初から最後まで受動的な人物だった。
結果的に思惑道理なこのあり方自体が風刺になる。主人公がどう考えようが、勇気を振り絞ろうが関係ない。
その人物がどう行動したかをそのままで記述するだけど、風刺となりえている。
敢えて、解説しないけど。
そして、この小説にはそういう箇所がいくつもある。ジョーク小説な感じ。