悪童日記 / アゴタ・クリストフ

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

 感情を抑えた文学という中では名作中の名作。作者のアゴタ・クリストフ第二次世界大戦を経験し、まさに戦争の歴史を身に刻んだ作家で
この作品は作者の戦争経験を色濃く表している。

戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作

 作中では人間・感情的な描写がない。幼い双子の「ぼくら」のルールに従って、ただ事実のみが淡々と書き連ねられていく。
双子は年齢とそぐわないほど、大人びて何事にも動じない。そのあり方はとても狂気に駆られた人間に見える。しかし、読んでいくうちに戦争に翻弄されヒステリックに生きる双子以外の人間たちが、何故かより人間的なはずなのに狂気の沙汰に見えてしまう。怖いけど、読み薦めてしまう一冊。