反貧困―「すべり台社会」からの脱出 /湯浅 誠

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

 近年叫ばれるワーキングプア・ホームレス問題を取り扱ってる本。
 この本の中で一番興味深いのが、ワーキングプアに対して、その人の努力が足りないからだ、根性が無いからだ、私は努力して貧乏にはならなかった。結局は貧乏なのは自己責任なんだ。と訴える人は少なからずいる。筆者はそういう自己責任論を掲げる人をこう批判する。
 自己責任論を掲げる人は自分の努力の前にある。前提条件に気付いていない。教育や親戚・友人などの社会的つながりや教養がある人とそうでない人を並べて自己責任を言うのはあまりに暴力的であることを挙げている。作中では社会的つながりや教養を’溜め’と言う概念で説明している。そして、貧困に至る過程には5つの溜めと排除があると言っている。まずは教育課程、企業福祉,家族福祉,公的福祉,それぞれの溜めが無く排除されたものは最終的に「自分は社会から必要とされていない、いらないんだ」と自分自身からの排除に至る経緯があると言う。
 問題は表層だけでは見えてこない。