「人殺し」の心理学」/ デーヴ グロスマン

 

「人殺し」の心理学

「人殺し」の心理学

人は殺人に対して、強烈な抵抗感を覚える。
それがこの本のテーマ。

私はぎょっとして凍りついた。相手はほんの子供だったんだ。たぶん12から14ってとこだろう。ふり向いて私に気づくと、だしぬけに全身を反転させてオートマティック銃を向けてきた。私は引き金を引いた。20発ぜんぶたたき込んだ。子供はそのまま倒れ、私は銃を取り落とし声をあげて泣いた。

ベトナムに従軍したアメリカ特殊部隊将校

あるベトナム帰還兵は、
敵の兵士がひとりで「自分の小屋のそばにさり気なく立って、こっちに慎重に狙いをつけている」
のに気づいたとき、「おれがいったい何をしたっていうんだ」と思い、
次の瞬間に「おまえなんか大っ嫌いだ。これっぽちも好きじゃない」と感じ、
その兵士を殺していたと言う。

この本に出てくる体験談は、殆ど意識的に人を殺していない。
反射的だったり、感情的だったりする。

人は人を殺したくはない。しかし、戦争の目的は如何に効率よく人を殺すのかを追求することだ。
そこに確かに矛盾はある。
しかし、現実に戦争は存在する。故に軍隊は、殺人を効率的にすることを惜しまない。
それは人にとってはひどくつらい行為だと言うことを忘れてはいけない気がした。

また、別の作品だけど、浦沢直樹の「MONSTER」には、
元腕利きのスナイパーが自分が人を殺せなくなった理由を語る場面がある。

「その誰かさんは、コーヒーを頼んだ。
 そして砂糖をいれたんだ。
 一杯、二杯……
 三杯、四杯……
 五杯目をいれたところで
 いつも飲んでいるコーヒーの味が口の中に広がった。
 誰かさんは、それをうまそうに飲みやがった。
 それで俺は銃をおろした。」