世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド / 村上春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

近未来(但し、20年以上前の作品なので、作中に携帯電話もインターネットも出てこない)で計算士という暗号をつくる職業の「私」の状況の変化を劇的に書いた。「ハードボイルド・ワンダーランド」

壁に囲まれた不思議な町で暮らす「僕」の生活をゆったりとした文体で書いた。「世界の終り」
の二つの話が交互(紙面上では)に進んでいく小説。
作中にこんな言葉がある。

人間が抱くヴィジョンはおおまかに言ってふたつにわけることができると思う。完全なヴィジョンと限定されたヴィジョンだ。僕はどちらかというと限定的なヴィジョンの中で暮らしている人間なんだ

基本的には、人生は限定的なものだろう。個人的にはそう思う。
この小説の文章は、どこか現実感に欠けて、ふわふわどこか宙に浮いているような感じがした。
現実と空想の狭間はどこだろう?なんて書くと、現実と夢を混同してるみたいだ。
この人の文章は、難しいことを難しくない言葉で書いていく作業な気がする。